【2022年5月施行】借地借家法の改正点
土地や建物の賃借に関する事項を定める「借地借家法」は我々にとって身近な法律であり、これまでも社会の変化や実情に応じて何度か改正が行われてきました。
今回の改正は、デジタル改革関連法に基づいて行われ、契約に関したデジタル化の内容が多く見られました。
電子契約を始めとする記録のデジタル化は、現代社会において急速に進んでいます。
2022年5月に施行された同法の改正点について詳しく解説します。
借地借家法とは
今回改正された借地借家法は、「建物を所有する目的で土地を借りる場合」もしくは「建物を借りる場合について」の期間や権利、更新などの事項についてを定めた法律です。
借地権については建物の所有(例:そこに居住すること)を前提としているため、最低でも30年間の存続期間が認められています。
また、存続期間が満了しても建物がある場合、貸主(借地権設定者)は借主(借地権者)に同一条件での契約を更新できます。
ただし、最初から50年以上の期間で借地権を設定していた場合、貸主は期間終了後に更新しない旨を定めることができます。これを「定期借地権」といい、従来の借地法にはなかった規定です。
自身の家を建てられる年齢から50年(以上)というのは、人生設計の観点でも適正な期間といえますし、借主はその間安心して居住でき、貸主は安定した収入が得られ、期間終了後の計画も立てやすいというメリットがあります。
一方で「借家」の章は、建物の賃貸借について定めたものになります。こちらは借主側が借りた建物に安心して住まい続けられるような内容になっています。
例えば、期間が1年未満の賃貸借契約は期間の定めがない契約とみなされますし、借主から期間更新の申出があった場合、貸主は正当な理由なく更新を拒絶することはできません。もちろん賃料の未払いが続くケースや、建物の利用が契約自体に違反しているという場合は、貸主が契約を取り消し、退去を求めることができますが、契約に則して居住している限りは原則的に借主は安定してその地に住まうことができます。
電磁的記録での契約が可能になったものも
電磁的記録の契約(電子契約)とは、紙に押印して取り交わしていた契約書を、オンラインで電子署名等を施し完結させる契約締結の方法のことです。
電子契約として認められるための要件は電子署名法やe-文書法などに記載されていますが、すべての契約に電子契約が認められているわけではありません。
これまで、土地建物の賃貸借の一部については電子契約が認められていませんでしたが、今回の借地借家法改正で一定の契約以外については電子契約が可能になり、遠隔地からでも契約しやすくなりました。
「定期借地権契約」と「定期建物賃貸借契約」のオンライン化が可能に
今回の改正によって「定期借地権契約」と「定期建物賃貸借契約」の2つのオンライン化可能となりました。
なお、通常の「借地契約」、「建物賃貸借契約」については、改正する前から電子での契約が認められていました。
定期借地権の特約
定期借地権については第22条1項後段で、定期借地権とする内容の「特約は、公正証書等による書面によってしなければならない」と規定されていたため、書面での契約締結が義務付けられていました。
しかし今回の改正では条項が追加され、電磁的記録による特約も、書面による特約と同様の扱いになりました。
ただし、22条の規定は居住用建物に関するものであり(一般定期借地権ともいいます)、事業用建物に関する定期借地権契約書については、これまでどおり公正証書として作成する必要があります。
定期建物賃貸借における事前説明書面の交付や契約
定期建物賃貸借は、契約であらかじめ定めた期間が満了することにより、更新されることなく賃貸借契約が確定的に終了するという制度です。
更新の有無は居住者にとって重要な条項であるため、これまでは書面での契約が義務でしたが、同条第2項に「前項の規定による建物の賃貸借の契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その契約は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する」との条文の追加により電子契約を締結できるようになりました。
また、これまでは更新がないことについて、賃貸人が事前に説明書面を交付して賃借人に説明しなければなりませんでしたが、賃借人が承諾すれば電磁的方法(事前説明書面をメールに添付するなど)で行えるようになりました。
定期借地・借家契約もオンラインが可能に
今回の法改正で、定期借地・借家契約もオンラインが可能になったことから、手続きの簡素化が予測されます。
簡素化された分、賃借人は事前説明および契約書面をよく読み込むことが求められます。
法令改正に伴う定期説明文のダウンロード
下記より、定期説明文のダウンロードが行えます。